【九十年の歴史と伝統は永永と】 時光善朗 校長
今から十年前、本校のシンボルでもある玄関前の欅(けやき)の再生治療が行われました。てきめんにその効果は現れ、欅は樹勢を取り戻し、生命の力強さとしなやかさを示してくれました。そして、引き続き宇部高生に寄り添いながら、その成長をそっと手伝ってくれています。ある時は、勝利の喜びに共鳴しているかのごとく木漏れ日をまき散らし、またある時は、失恋の悔し涙を隠してくれるがごとく雨粒を柔らかに落としてくれます。
久しぶりに母校を訪ねてこられた卒業生のみなさんが、懐かしそうに欅を見上げ、校門脇の桜の木に目を移されます。同級生同士でこられた方々は、青春の日々を思い出しておられるのでしょうか、はしゃぎながら校内を一周されます。ただ、戻ってこられたとき、「平中新館がなかった。格技場もなくなっていた。」と寂しげに漏らされます。平成の時代になって、外廊下の校舎も、平中新館も取り壊され、さらに体育館も平成十六年に建て替えられたこと、新たな環境の中で皆さんの後輩は宇部高の伝統とプライドを引き継いで頑張っていることをお話しすると、安心され、最後は後輩へのエールを残して去られます。
さて、本年度、山口県立宇部高等学校は創立九十周年を迎えております。宇部地域の有為な若者の育成を目的に設立された宇部村立宇部中学校、私立済美女学校、宇部女子実業補習学校の三校を源流とし、明治、大正、昭和、平成と歴史の中を歩み続けた結果、卒業生総数は三万四千三百二十八人にも達しています。その間、数多くの人材が輩出し、学界、官界、産業界等、各界で活躍されておられることは、本校の誉れであり、後に続く後輩にとって頼りがいのある道標となっております。
現在、本校では、「豊かな人間性の育成と個性の伸長」、「基礎学力の充実と自学意欲の涵養」、「健康な心身と旺盛な実践力の育成」の三点を教育方針として、文武両道をめざす伝統を引き継ぐとともに、新しい時代の開拓に果敢に挑戦する意欲と能力を身に付けた生徒の育成に教職員が一丸となって取り組んでいます。平成十九年度から文部科学省の指定を受けている「スーパーサイエンスハイスクール」はその一例であり、めまぐるしい科学技術の進展の中で大切にしなければならない「科学的倫理観と国際性をもつ科学技術系人材の育成」に取り組んでいます。
最後になりましたが、地域の皆様方に対しまして、これまでの宇部高への御支援に心よりお礼を申し上げますとともに、これからも末長く御愛顧を賜りますようお願いいたします。
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